日時場所:

2015年3月29日(日) 於)筑波大学文京校舎

総合司会:

鶴光代 当センター副理事長

挨拶 村瀬嘉代子

当センター理事長

期待と覚悟をもって心理研修センターは設立されたとまず報告され、センターの活動目的について紹介があり、出講いただいく皆様へのお礼が述べられました。

鴨下一郎先生

衆議院議員 元環境大臣
心理職の国家資格化を推進する議員連盟会長代行

 統一地方選挙の期間中にもかかわらずご登壇くださり、公認心理師法案にいたる心理職の資格に関する経緯をお話いただきました

「心理職は社会的にどういう立場でどういう仕事が求められているか問題意識を共有してほしい。

特に、今回の法案はこれまでさまざまな意見の調整が困難であったところをやっと到達しているものであり、あちらを立てればこちらが立たずといった状況にある。河村代議士と鴨下の連携と共に、多くの国会議員のご理解、加えて文部科学省、厚生労働省の協力及び各団体等とのご支援が進まないと進展しないところがこの問題の複雑なところ。こうしたことから、昨年6月16日に提出された法案で各党の合意をまとめようと思っている」旨のお話があり、協力の要請がなされました。

「今後は文部科学委員長提案としてやってゆく努力をしている。また心理職は国家資格化されることにより、若い人に将来が見える状態になり、領域の可能性が広がる。大学でも心理学部ができて多くの人の夢を叶えることになるだろう。機運を国民に広める運動を展開してほしい」

とのお話でした。

なお、衆議院議員・議連事務局長山下貴司先生よりのメッセージを秘書様代読、衆議院議員・自民党経理局長吉川貴盛先生、衆議院議員・自民党政調会長代理松本純先生、衆議院議員宮川紀子先生、衆議院議員牧原秀樹先生よりの祝電が司会者により披露されました。

第1部 障害ある人への支援

司会者 松野俊夫(センター理事 日本大学)

佐藤忠彦氏

精神科七者懇談会 心理職の国家資格化問題委員会委員長
社会福祉法人 桜ヶ丘社会事業協会 理事長

精神科七者懇談会は、民間・国公立精神科病院、総合病院精神科、精神神経科診療所、大学精神医学講座、精神神経学会の7つで構成され、精神医学・医療・保健・福祉に関わる重要課題について、ともに取り組んでいると自己紹介がありました。心理職の国家資格化は、1)声明や要望の公表、2)担当委員会の設置、3)推進協への参加、心理団体と連携、4)カリキュラム案の検討など、長年の活動がご紹介されました。

心理職への精神科医からの期待として、執筆された「今日の精神科病院と心理職への期待」(下山、野村編著「精神医療の最前線と心理職への期待」所収、誠信書房、2011年)から、以下の諸点が特にご紹介されました。

「①理論や技法を勉強してそれをクライエントに適用するという発想ではなく、どのような心理的援助が求められているのかを考える、②精神科医療の領域では、精神医学的診断と治療という知識を持つ、③精神科や看護師などの他職種と、よいコミュニケーションを保つ」(2006青木省三)

「①「病院の人」であるという、自覚と責任感が求められる、②医学、医療について学び、理解する、③過剰な心理化に陥らぬよう留意する、④医療スタッフの一員として他職種と連携する、⑤自分の専門領域からすこしはずれていてもよい機会と思って引き受ける」(2006成田善弘)

「在宅や地域の精神科チーム医療の立場から、①生活場面を肌で感じるために積極的にアウトリーチすること、②(スペシャリストとしての技量を高めるだけではなく)「生活作り」の手伝いをする何でも屋であること」(2009 松田ひろし、他)

そして、医療において専門家集団は「専門性の提供とともに、個々の専門性にこだわらず業務を共有するという二律背反的役割」(2000武井妙子)を果たしながら「診療科と職種とを問わず、患者障がい者に心身一元的に関わるべき」と述べられました。

最後に、公認心理師法案の無修正成立を要望していることを改めてご紹介されました。

平 陽一氏

東邦大学 医療センター佐倉病院、産業精神保健職場復帰支援センター
(認定産業医、労働衛生コンサルタント、臨床心理士)

「改正労働安全衛生法によるストレスチェックの義務化と産業領域での心理支援」と題してメンタルヘルス・過重労働に関する行政の施策のこれまでの流れをご紹介くださいました。

特に、2014年6月に公布された労働安全衛生法改正により、従業員数50人以上のすべての事業場は、毎年、「心理的負荷の程度を把握する検査」(ストレスチェック)を実施することが義務付けられました。このことは、国家規模でのメンタルヘルス対策の充実を図るものであり、将来的には、50人のしばりを越えて、6000万人におよぶ労働人口のすべてが対象となってくる可能性もあるとのことです。

このストレスチェックを行う実施者は、医師、保健師、看護師、精神保健福祉士の四資格のみが該当するとのことです。心理職については、公認心理士法案が通ることが前提であったとのことで、現状の臨床心理士などの心理資格では、国家資格でない以上認められないとの見解が厚生労働省により示されているとのことでした。

ストレスチェック(心理的な負担の程度を把握するための検査)の流れは、この四つの国家資格者により、質問紙法による心理検査が実施され、その後、必要に応じて、医師による面接指導が行われることになっておりますが、問題は、その後、カウンセリングなど継続面接を行うにしても、費用を負担する企業側としては法的要件である以上、国家資格者へのニーズを優先せざるをえないという状況であり、現在の心理職の資格のままでは、現実的に関与が難しいと考えられるとのことでした。

また、最後に「公認心理師法案」の医師の指示(第42条第2項)について以下のような説明をいただきました。

「医事法制ではない一般法であるので、ここでいう「医師の指示」は、「医師とより密接な連携」である。医療と心理支援は、似て非なるところがあり、疾病性を基本とする医療SOP(Standard Operation Procedure 基本的には「保険病名」に基づく、標準化された一定の診療手続き)は、事例性を基本とする心理支援では成り立たず、この指示は、医療上の指示命令としての指示ではなく、公認心理士法案第42条の第1項に記された連携に増して、より密接な連携(情報交換や協力)をすること、と解釈とすべきである。」要は、精神疾患を有するケースは、主治医(医療機関)との連携が不可欠であることを明確に示しているのであり、その他の心理業務を妨げるものではありません。

産業精神保健活動は、事例性が基本であることから、心理職の活動にきわめて近く、心理支援を有効かつ効果的に行える職種としての心理職へのニーズは確実にあり、早いタイミングでの国家資格化成立が求められているとのことでした。

東川悦子氏

NPO法人日本脳外傷友の会理事長
認定NPO法人日本障害者協議会副代表

高次脳機能障害の今とこれからと題して、ご子息の交通事故経験から始められた脳外傷友の会の活動をご紹介されました。障害をもった「余生」ではなく、「人生の創造」への支援をというコンセプトのもとに、少しずつ社会への働きかけをとおして制度の整備を実現してこられた経緯をお話されました。

脳外傷友の会では、大会アピールのひとつとして次のことを決定したとのことです。「高次脳機能障害支援拠点機関のさらなる充実を図り、人生の復権であるリハビリテーションに重要な役割を果たす公認心理師の国家資格付与と、診療報酬への加算を要望しましょう。」

第2部 子どもへの支援

司会者 石隈利紀(センター理事、筑波大学副学長)

高橋利一氏

至誠学園 法政大学名誉教授

(現在準備中)

相原佳子氏

弁護士 日本司法支援センター法テラス事務局長 

日本では夫婦の離婚のほとんどは協議離婚であること、そこにはその後の子どもの養育に関する定めは義務付けられていないことが諸外国との違いとして紹介されました。

しかし子どもの養育や離婚後の面会交流のあり方は子どもの成長にとって重要であり、離婚のからむ事例を担当することもある心理臨床での法律の知識や問題への取り組みについて新たな知識となり、考えさせられるお話でした。

斉藤大輔氏

文部科学省初等中等教育局 児童生徒課課長補佐

 「スクールカウンセラーの現状、心理職に対する期待について」という題で、スクールカウンセラーの現状について、心理職を取り巻く状況について、児童生徒の自殺予防について話されました。スクールカウンセラー等活用事業の配置人数、相談内容別の相談人数の紹介がありました。

また、学校における教育力の向上のため、これまで担任教師が対応することが多かったところから、心理や福祉などの専門性を有するスタッフが連携する組織としての取り組みへと変化する「チーム学校」という考え方に移行すること、スクールカウンセラーとならんでスクールソーシャルワーカーの活用を進める方向であることが紹介されました。

心理職を取り巻く状況としていじめ防止対策推進法や子どもの貧困対策に触れ、ここでもスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの拡充の方向が示されました。また自殺予防について文部科学省の取り組みが詳しく紹介されました。

第3部 諸領域の心理職へのニーズと現代的課題

司会者 村瀬嘉代子(センター理事長、北翔大学)

宮岡 等氏

北里大学医学部精神科

「医療における連携に向けて」というタイトルのもと、精神科七者懇談会の要望を紹介された後、「北里大学精神科医療と心理職」と題して、氏の立場でさまざまな場の心理職にかかわっている現状を俯瞰し、全体としての心理職の状況に意見を提示された。氏と氏の教室では次のような場で心理職と接点をもっているとのことです。

○北里大学病院:北里大学病院救命救急センター、リエゾン精神科、精神科外来、緩和ケア、移植チーム、精神科身体合併症病棟(予定)、小児児童精神科  ○北里大学東病院:精神科外来、精神科入院病棟(閉鎖)、精神科救急入院(基幹病院)デイケア・作業療法、認知症疾患医療センタ-  ○大学健康管理センター  ○相模原市発達障害支援センタ-、青少年総合センタ-(スクールカウンセラー)  ○児童相談所  ○精神保健福祉センター  ○心理学修士2年生研修受入  ○産業医活動(産業心理士) ○院外のカウンセリング機関。

これらの場における心理職の課題として次のようなお話がありました。第一に、病院内の心理職についての議論では、検査や治療に関わる職員のうち唯一国家資格がないが、多くの患者さんは国家資格と考えている。1)国家資格のない者が「医務職」の給与体系でよいか。2)診療報酬を算定できない。3)「国家資格ではない」と患者さんに説明した方がよいか。これらがしばしば問題になる。

現在、北里大学東病院では心理士業務は心理療法よりも副作用の少ない(問題が起こりにくい)心理検査中心にしているが、このことは心理士のモティベーションに影響がある。国家資格ではなく、知識と技術を担保できない現状では、精神保健福祉士に心理学を学んでもらった方がよいという意見もある。

第二に、スクールカウンセラーから病院への紹介事例を通しての意見として次のようなお話がありました。知的障害に気づかず遊戯療法的精神療法を続けていた事例や、知的障害の原因疾患の身体面の精査がなされないままカウンセラーが対応していた事例(緩徐進行性変性疾患の可能性も疑われた)があるし、幻聴があるのに統合失調症の可能性をほとんど考えず、心因性としてカウンセリングを続けていた症例がある。

氏の接する心理職のうちでは最も医療との接点が少ないのが、スクールカウンセラーである。彼らの医学知識も問題であるし、彼らを監督する教育委員会に周囲の意見があまり入っていかないという問題もあるのではないか。こうした懸念への対応として相模原市では種々の議論の末、精神科医が加わるケースカンファレンスを2カ月に1回実施することになった。

その他の問題として、修士学生の実習をとおしての意見として次のようなお話がありました。大学院生にあまりに精神医学の知識がない、指導教官が精神医学の必要性をあまり理解していない、指導教官も自分の専門に偏っていて広い範囲の知識を教えることができていないのではないか。

心理療法・カウンセリングの現状に関する意見として次のようなお話がありました。心理療法やカウンセリングには長い時間がかかるという前提は捨てて、治療技法を考えた方がよいのではないか。短時間でもかなりの対応ができると思う。その方が活躍の場が広がる。

最後に、精神医療にも現在、多剤大量処方や不適切な面接など多くの問題があるため、その改善のために心理職に期待するとして以下のお話がありました。精神医療では、今後の方向性として医療内容の可視化、透明化、セカンドオピニオンの普及、調剤薬局などを含めた周辺職種との相互監視を重視すべきである。そのためには、地域連携、教育を通しての診断や治療方針の共有、関係者の情報共有ツール、二人主治医制などが考えられる。心理職と精神科医の相互監視は両方の質を高めていくはずである。その意味でも質の担保のために心理職の国家資格化を急いで欲しい。

以上、心理職にとって厳しいご指摘も含まれる内容ですがフロアのアンケートには重要な指摘がたくさんあって考えさせられた、という回答が多かったので長くなりましたが紹介しました。

日詰 正文氏

厚生労働省社会・援護局社会保健福祉部
障害福祉課 発達障害対策専門官

公認心理師ができることはゴールではなく、ひとつのステップ、と前置きされて、「厚生労働省における発達障害支援、引きこもり対策」と題してお話されました。発達障害者支援法の制定と関連して他の法律との関連についての説明と支援の全体像のお話がありました。

ひきこもりについては家族支援の重要性、支援推進の現状、関連機関の連携について説明がありました。いずれの支援も長い期間をかけて、多くの職種の連携が必要。見立て、家族会とのチームワークなどの重要さに触れ、生活困窮者への支援にも拡がってゆく課題であることが示されました。心理職の専門性は障害ある子供を包み込む子供たちの柔軟な発想や行動をとらえて意味づける役割もあるといった指摘にフロアの共感が集まっていました。


最後に河村建夫先生が駆けつけられ、以下のお話がありました。

河村建夫先生

衆議院議員、元内閣官房長官、元文部科学大臣、
心理職の国家資格化を推進する議員連盟会長

今日は萩市の桜の植樹式をして来ました。朝方は、鴨下先生のお話があったわけですが、鴨下先生は医療側、私は文教側からということで最初から共にやってきた。その間いろいろな方の応援をもらっています。心理職は国家資格でないことは残念極まりないことで、なんとしてもこれを実現したい。

私がこのことにかかわったのは 15 年前、文部科学大臣のころ、河合先生がこられて熱っぽくお話をされた。医療側はすでに厚生労働省を中心に平成 2 年からいろいろな角度からこの問題を取り上げていた。医療現場ではみな国家資格の方々が入っているので、その必要性を言われたのです。国会側もそれを受けて医療側の代表、それから教育側の代表それぞれの議連が立ち上がっていた。医療側代表は堀内光男先生、教育側は中山太郎先生というお医者さんが代表でおられ、話をつめた。

私と鴨下先生を中心にいま外務大臣をやっている岸田文雄先生、復興大臣をされていた根本匠先生それらが集まりまして、厚労、文科両省官僚を呼び、つめていったのです。医療側からは即使える人材なら 4 年制でもいいという話があり、大学院を出た方々との二つの法案でつめました。しかし、精神科団体との話が当時はまとまらなかった。

今回は加藤官房副長官、岡山の山下貴司議員を引っ張って法律の専門家ですが、やってゆこうということになったのです。皆さんのほうも大同団結されて案を出された。私どもはそれらを受け止めて進めて参りました。所管は文部科学省と厚生労働省なので、両大臣共通の所管という法律のたてまえになっております。

臨床心理士の存在のあり方については医師がクライアントを持っている場合の心理職側への指示の問題で一部異論があったが、今までどおりやっている形を法案に表現すればこういうことだということで原案ができているのでご理解いただきたい。

この原案でゆくなら、改めて党内の手続きをする必要がない。あとは野党側もそれでまとめてくれれば一気にこのまま提出して、もう一度前回同様に議論して、全会一致になれば委員長が提案していっぺんに通ってしまうのが理想です。

若干大事な問題なので議論させてもらいたい。それから今、一部異論を唱える方が指摘される点があるので、そういうものは国会の決議に追い込むという形をとりたいという話も出ています。提案したらすぐ成立ということにはならないかもしれませんが、前回提出した法案がもう一度提出されればこれは成立できると思っているところです。

国家資格がないために就職とかでご不便をおかけしている点もある。これまで 10 年近くたっている。いろんな席に呼ばれるたびに申していますが、私の三女がアメリカにわたり、ノースカロライナ州の資格をもっている。このまま日本で使えないのは困るので、国家資格にするなら、ぜひこういう資格も受験資格の対象にして、国家資格がとれるように法案を作ってほしいといわれています。

日本国家が豊かに続くためには次代を担う子供たちが複雑な社会をどういう風に生きてゆくかという課題がある。臨床心理士という名前は法律上は残すということになっているのでこれまでどおりお使いいただけます。この時代カウンセリングはいろんな方面で非常に大事だ。

今後新しい仕事を作る必要があります。地方創生を推進し、さまざまな地域で仕事ができる状態を作る。人の流れを中央にばかりとならないよう、カウンセリングは現場現場になければならない。そういう意味で国家資格を持って活躍できる社会を作ってゆこうではありませんか

今回大詰めになっていて、今まさに調整中です。民主党、野党側の皆さんの文教委員会で中心的役割の方、また国会対策の役割の主要な方々には働きかけをしています。自民党のほうは若干の異論はあっても何が何でも今国会で通すのだと、自民党の国対委員長にはそう言っています。法案が原案で行けば問題ない。

国家予算案が通ったので、本格的に各委員会がスタートします。衆議院予算委員会は終わったことだし、文部科学委員会も大臣所信を聞いてこれから議論を出してゆく。最終の段階では厚生労働委員会でもこの議論をする場があるだろう。衆議院先議で、参議院でも議論をしなければならない。大体全会一致で取りまとめるよう目指しています。

これまで皆さんお待たせしましたが、今回なんとしても決着をつけて、皆さんにがんばっていただける環境を作ってゆきたい。強い決意で臨んでいるのでご理解いただき、それぞれの職場、地域でご精励いただきますようお願いします。